あの頃、私はBTSがグラミーを取るのを待っていた。
- Lily Yoon

- 3 時間前
- 読了時間: 4分
最近、Disney+で「BTS Monuments: Beyond The Star」を見ました。
今はBTSが好きなので、もちろん、かなり感情を伴って見ています。
「ああ、この頃、こんなふうにあがいて、頑張って、苦しんでいたんだ」
「それでもステージに立つと、こんなに輝いていたんだな」
そんなことを思いながら(泣きながら、笑)見ていたのですが、私は昔からBTSのファンだったわけではありません。
むしろ、ファンになるよりずっと前から、韓国語通訳の仕事ではBTSの名前を扱っていました。
そういえば、あの頃の私は「BTS」ではなく、
「防弾少年団」
と訳していたんです。
おじさんたちの中で「防弾少年団」と訳していた頃
通訳では、聞いている人がその名前を知っているかどうかによって、固有名詞の訳し方が変わることがあります。
名前だけで伝わるのか。
日本語での名称を言ったほうがいいのか。
それとも、「韓国の男性アイドルグループの……」と説明を加えたほうがいいのか。
聞き手の反応を考えながら、その場で調整します。
BTSがまだ今ほど広く知られていなかった頃、私は国際交流関係のイベントや、お堅めのシンポジウムなどで通訳をしていました。
一見、K-POPとはあまり縁がなさそうな場所です。
でも、こういう場でも案外、韓国のエンタメや文化の話は出てきます。
スーツ姿のおじさんたちがずらっと座っている会場。
その同時通訳ブースの中で、私は、
「韓国の男性アイドルグループの、防弾少年団が・・・」
と、注釈まで付けて訳していました。
今になって思い出すと、なかなか面白い光景です。
それが、BTSの知名度が上がるにつれて変わっていきました。
いつの間にか、
「BTS」だけで通じる。
あ。もう説明しなくても分かるんだ。
BTSが有名になっていく過程を、私はニュースやランキングだけではなく、通訳するときの言葉の変化でも感じていました。
通訳をしていると、こういうところから世間の知名度を妙に肌で感じることがあります。
ただし、その頃の私はファンではありません。
仕事でよく名前を聞く、有名な韓国のグループ。
本当に、そのくらいでした。
午前2時、BTSがグラミーを取るのを待っていた
数年前、テレビ局関連の通訳仕事で、BTSがグラミー賞を受賞するかどうか、結果が出るまで待機したことがあります。
もしBTSが受賞したら、日本のニュースで使用する映像を翻訳する仕事が発生する予定でした。
時間は、午前2時頃。
今の私にとって、BTSがグラミーを取るかどうかをリアルタイムで待つなんて大事件です。
でも、当時は完全に仕事でした。
受賞したら、映像翻訳の仕事が入る。
だから結果を待つ。
でも、眠い。
まだかな……。
そして、受賞しなかった。
「あ。仕事なくなった。じゃあ寝よう」
本当に、それくらいでした。
今の私が聞いたら、「ちょっと!」と言いそうです(笑)。
歴史的な瞬間を見守っている気持ちもなければ、受賞できなくて悔しいという気持ちもない。
眠いか、仕事が入るか。
当時の関心は、ほぼそこです。
我ながら、分かりやすい。
だから「Beyond The Star」を見ながら、あの頃のことを思い出すと、不思議な気持ちになりました。
私が通訳ブースで「防弾少年団」と訳していた頃。
午前2時に、眠いと思いながらグラミーの結果を待っていた頃。
この人たちは、こんなふうにあがいて、頑張って売れて、苦しんでいたんだ。
そして、そんなことを感じさせないくらい、ステージでは輝いていたんだな。
私は当時から、BTSを知らなかったわけではありません。
仕事柄、名前も活動も知っていました。
でも、知っていることと、好きになることは全然違いました。
今になってドキュメンタリーを見て、当時のBTSをもう一度、今の気持ちで見ている。
昔の私は何も知らずに「寝よ。」と言っていましたけど。
そして2026年、今度は「出さない」
2027年に開催される第69回グラミー賞から、「Best Asian Pop Music Performance」という新しい部門が設けられることになりました。
K-POP、J-POP、C-POPなど、アジアのポップミュージックの芸術性や世界的な影響を評価するための部門だと説明されています。
その発表から約1か月後、BTSは今回のグラミー賞に自分たちの音楽を提出しないと表明しました。
地域や言語によって分けられるのではなく、音楽そのものとして聴かれ、愛されることを願う、という趣旨でした。
新しい部門については、いろいろな意見があると思います。
アジアの音楽が評価される機会が増える、と考える人もいる。
逆に、なぜアジアだけを別の枠に分けるのか、と感じる人もいる。
私も、賞のあり方や音楽の売り方について、どちらが正しいのかを簡単に決められるとは思っていません。
いろんな意見はある。
でも、BTSが自分たちで「今回は提出しない」と決めたことを知って、私は思いました。
やっぱり、カッコいいな。
数年前の午前2時、「あ。仕事なくなった。じゃあ寝よう」と思っていた私には、まったく想像できなかったと思います。
BTSがこんな選択をすることも。
何より、自分がこんなにBTSを好きになっていることも。
好きになるって、おもしろい。
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